語源 【くだらない】

 子どもの頃は,新しいことば,初めて聞くことばを,何の抵抗もなく受け入れ,自分もいつの間にかそのことばを使うようになるものです。

 親に 「そんなくだらないこと言うんじゃない」 と叱られることがあります。 「くだらない」 ということばをその時に初めて聞いたとしても,なんとなく 「くだらない」 というのは,あまりよくないこと,言ってはいけないことを自分は言ってしまったんだ・・・ということを理解します。

 ところで,よくないことをなぜ 「くだらない」 と言うんだろう・・・? そんな疑問を感じるのはいつごろからだろう? いや,50 歳や 60 歳を過ぎても,そんな 〈変な疑問〉 なんかもたない人のほうが多いのかもしれません。

 「くだらない」 を漢字で書けば 「下らない」 だろうとは想像できる。 「下る」 だけなら 「下」 という漢字のニュアンスからして “下等な” “下劣な” に結びつき,“よくない” の意味になるかもしれない。

 しかし,「下らない」 と否定形になっているから,“下等ではない” “下劣ではない” ということになり,つまり “よくなくはない” となり,“よくない” の反対で “よい” という意味になってしまうではないか・・・。 ・・・ なんて考えて,わけが分からなくなってしまいます。

 「下る」 が “よい” を意味するのであれば, 「下らない」 が “よくない” ことになる。それならすっきりするのだが・・・。

 中学生の頃から,そんな屁理屈みたいなことを思っていたのですが,40 歳を過ぎて,ようやくこのモヤモヤが晴れました。

 そうなのです。 「下る」 は 〈よい〉 ことを意味していたのでした。

 今でこそ 「上京」 といえば,地方から東京へ行くことをいいますが,その昔は,日本の中心,つまり都は京都にありました。その頃の上京とは京の都へ行くことであり,それを上洛と言っていました。また,商い,つまり商業も大阪を中心に発達してきました。今の関西を 「上方 (かみがた) 」 と言ったのも,その表れの一つです。

 京都や大阪にはそういった誇りがあり,文化や生産品にも確かに質のいいもの,高級なものが多かったわけです。

 江戸に幕府が置かれるようになっても,江戸の武士や商人たちは,いざという時には,上方からの高級品を取り寄せていました。特に,酒はやはり 灘 (なだ) や伏見の酒が高級な酒として認められていました。こういった,上方から江戸へ運ばれる酒を 「下り酒」 と呼んでいました。つまり 「下り酒」 は高級な酒を意味していたのです。

 しかし,江戸の庶民が普段口にする酒は,そういった上級の 「下り酒」 ではなく,地元でつくられたどちらかといえばまずい酒でした。 「下り」 ではないまずい酒をのんでいたわけです。

 また,いくら上方でつくられたものといっても,品質の悪いものは江戸へ下ることはなかったようです。

 つまり 「下らない」 もの = 質の悪いもの の図式ができあがってきました。

これが,酒とか物品だけでなく,「くだらないヤツ」 と人にまで使われ,さらには 「くだらない考え」 とか 「くだらない行動」 など,抽象的なことがらにまであてはめて使われるようになってきたのです。

 現在の世の中で 「くだらない」 もの 〈ワースト 3〉 といったら何だろう?

 テレビの 「くだらない番組」 がよくヤリ玉にあげられます。

 「くだらない政治家」 もうようよいるようです。

 さて,もう一つは・・・,何にしよう・・・, ん~と・・・, え~と・・・?

 うん,やっぱり・・・, この 「語源帳」 ・・・ かな ・・・。


[追記]  2018.04.11

上に書いた語源説はまちがいだとして,次の説を書いている本がありました。

「下る」 には,文字やことばの意味が通じる,という意味があって, 「下らない」 はその打ち消しだから, 〈意味がない〉 ということになり,そこから 〈筋が通らない〉 ことを言ううよになり,そらに 〈ばかばかしい〉 ことも言うようになった,とする説です。

ただ,古語辞典でも, 『広辞苑』 『大辞林』 でも, 「下る」 のそういう意味を確認できませんでした。

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** 《参考図書》 **

記号-番号 については,

《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

を参照してください。

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この記事へのコメント

筑紫二郎
2020年07月22日 14:07
やはり、下り酒説が主流ですね。私が読んだもので、草紙(本)を取り上げた例がありました。貸本が人気になった初期の頃は草紙出版数は上方が江戸を圧倒していて、まさに下ってきていたそうです。次第に江戸が逆転していきました。
ナッシー
2020年07月23日 07:42
筑紫二郎さん
コメントありがとうございます。
ことばの語源については,複数の説があることが多いのですが,中には,その説の根拠があまりはっきり示されていないものもあります。
記事の追記 (2018.04.11) の説も,根拠があいまいな説ですので,私もやはり 「下り酒」 説が納得しやすいと思っています。
それにしても,語源説に限らず,ある一つのことを言うのに,本によって書いてあることがいろいろ違います。たまたま最初に読んだ本に書いてあることを,それが真実だと思ってしまう人があまりにも多いようです。やはり,何冊かを読み比べる必要があると思っています。

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