語源 【敗軍の将,兵を語らず】

プロ野球で,首位のチームと 2 位のチームが,あと 5 試合を残して, 1 ゲーム差で競り合ってきたのが,最後の直接対決で 2 位のチームが 3 連勝して逆転優勝してしまうことがあります。

そんな時,優勝を逃したチームの監督が,記者たちから 「敗因は何だったでしょう?」 と聞かれて, 「敗軍の将,兵を語らずです。選手たちは一生懸命に頑張ったのです」 とすごすごと引き上げてしまうことがあります。

まあ,監督としては, 「負けたのはすべて私の監督としての至らなさのせいです。選手たちに責任はありません」 と言うことろを,ちょっと格好をつけて歴史的な故事を持ち出したのでしょう。

しかし,この時,監督が,選手たちの打撃不振や大事な場面での失策をかばって,そのせいにはしたくない,と言おうとしたのでしたら,監督は 「敗軍の将,兵を語らず」 の意味を誤解していることになります。

この場合の 「兵を語らず」 の 「兵」 は,人としての兵士のことではありません。

この 「兵」 は 〈兵法〉 〈戦略〉 の意味なのです。

つまり,戦に負けてしまったら,その敗軍の大将には 〈戦法〉 について語る資格なんかない,ということを言っているのです。

ですから,上の監督が, 「もう負けてしまったのですから,今さら私の采配がどうのこうのと言っても仕方のないことです。私が責任をとるだけです」 と言おうとしたのなら, 「兵を語らず」 の意味を正しく理解していたことになります。


このことばは,紀元前 204 年,漢の韓信 (かんしん) が趙 (ちょう) との戦いに圧勝したのですが,その時,自軍の兵士たちに, 「趙の広武君 (こうぶくん) は殺さないで捕虜として捕まえるように」 と指示していました。
軍略家として著名だった広武君を,韓信は手厚くもてなして, 「我々は,これから燕 (えん) と斉 (せい) を討ちにいくのだが,その効果的な戦略を教えてほしい」 と教えを請いました。
しかし,広武君は 「敗軍の将は以て兵を言うべからず,亡国の大夫は以て存を図るべからず」 (戦いに敗れた将軍は戦いについて語る資格はない,国を滅ぼされた政治家は国を存続させる政策を語る資格はない) と言って,韓信の申し出に応じませんでした。


このことばは,その後,戦に限らず,事業に失敗した者は,そのことについて意見を述べる資格はないとか,恋愛に破れて失恋した者は,恋愛論などを語る資格はないなど,いろいろな状況にも使われるようになりました。


なお,上の広武君は,その後,韓信の誠意ある願いに心を動かされて,戦略をさずけ,その結果,韓信は燕と斉に勝つことができたとのことです。

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** 《参考図書》 **

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《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

を参照してください。

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