語源 【鞍替え】

A) 「昨日,いつものバーに寄ったんだけど,新しい女の子が入ってたぞ」
「ああ,知ってる。でもな,あの子,前にほかのバーにいて,そこでちょっとトラブル起こして,居づらくなったんで鞍替えしてきたらしいんだ」

B) オレなあ,今のバイト,時給 800 円で,仕事けっこうきつい割には安いんだ。でな,友だちが似たようなバイトやってて,そこは 850 円でな,そいつが店長に口きいてやるから,来ないかって誘われてるんだ。そっちに鞍替えしちゃおうかな。

C) 川島のヤツ,ゴルフやり出して 10 年ぐらいになるけど,最近は伸び悩んでいて,そろそろ限界らしいから,もうゴルフはスパッとやめて,ボウリングに鞍替えするなんて言ってたぞ。

D) 参議院の民進党の奥村議員が,次の参院選では自民党の公認候補として出るって噂だぞ。まあ,なあ,民進党がもともと保守なのか革新なのかあいまいではっきりしていなかったから,党としての存在が危なくなったんで,あっさり鞍替えってことだろうけどな。


「鞍替え」 の内容というか,仕方にもいろいろあるようです。

現代の 「鞍替え」 は, A) や B) のように,職場や仕事の内容を替えることを言う場合が多いようですが, C) のように趣味を替えることや, D) のように考え方の立場や思想を変更したりすることにも使ったりします。


「鞍替え」 と 「鞍」 の字を書きますから,馬を替えることからきているのかもしれませんが,実際には,遊里の世界で,遊女が所属する店 (遊女屋,遊郭) を替えることからきたことばというのが,語源としてはほぼ定説になっているようです。


その場合の,もとになっていた言い方は 「ねぐらがえ (寝座替え) 」 で,その語頭の 「ね」 が脱落したものとされています。

もう一つの説として, 「くるわがえ (郭替え) 」 の 「るわ」 の部分が [ruwa] → [ra] と短縮されて 「くらがえ」 になったとしているものもあります。

そのようにしてできた 「くらがえ」 ということばに,後から 「鞍替え」 の字を当てたのではないかと思います。


遊女が所属する店を替えるのは,主として病気やトラブルが理由になっていたようですので,自分の意思でというよりは,雇い主によって他の店へ転売されるというのが実態だったようです。

そういう意味では, 「鞍替え」 はマイナスのニュアンスのことばになりますから,冒頭の B) のような場合は,厳密にいうと 「鞍替え」 とは言えなくなりそうです。


まあ,もっとも,現代の就職事情では,終身雇用も必ずしも理想的な形態とは思われていないのかもしれませんし, 「鞍替え」 もそんなに深刻なものではなく,身軽に転職することにも使われることばになっているようにも思えます。


私自身の場合も,身軽にだったかどうかは別にして, 大学 (助手) → 福祉センター (指導員) → 研究所 (研究員 → 主任) → 福祉センター (科長) → 大学 (助教授 → 教授) と,転々と鞍替えしてきました。

言っときますけど,転職するたびに給料が上がるわけではありません。

最後の,福祉センター → 大学 の時は,給料が約 80 % に減りました。

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** 《参考図書》 **

記号-番号 については,

《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

を参照してください。

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この記事へのコメント

あやの
2019年10月10日 11:19
友達のSNSで「鞍替え」の文字があって、この言葉はどう読むのだろうかという疑問からグーグルで検索したところ、あなたの記事にたどり着きました。鞍替えにこのような意味があったとは、勉強になりました。ありがとうございます。
ナッシー
2019年10月10日 11:57
あやの 様
コメントありがとうございます。
定年退職して,ヒマをもてあまして始めた語源調べですが,自分で思っていた以上に永続きしていて,7年を超えました。
また,時間の余裕がありましたら,お立ち寄りください。

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