語源 【危機一髪 / 間一髪】

A) 交差点で右折しようとしたトラックが,対向車より先に曲がってしまおうとして,猛スピードで横断歩道へ突っ込んできた。横断中の私は反射的に身をかわしたが,運転席の横のサイドミラーが私の眼鏡の縁に当たって,眼鏡が吹っ飛び,私の肘がトラックの車体のどこかに接触して,私自身も一回転したが,なんとか大事に至らずにすんだ。まさに危機一髪だった。 (これは,私が 40 歳の時に,出張先の大阪市内で体験した出来事です。図のように,私は全盲者を手引きして中間の安全地帯を越えて,次の横断歩道へ足を踏み入れた瞬間でした)

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B) 改札口を入った時に,最終電車の発車のベルが鳴り始めた。猛スピードで階段を駆けのぼり,反対側のホームに下りたら列車のドアが閉まりはじめた。慌ててドアのすき間から飛び乗って,間一髪でどうにか間に合った。 (こちらの方は,多くの人が何度か経験しているでしょう)


ところで,上の例文の A) の 「危機一髪」 も, B) の 「間一髪」 も,同じような意味のことばです。その証拠に,例文の 「危機一髪」 を 「間一髪」 に置きかえても,また 「間一髪」 を 「危機一髪」 に置きかえても,文意は大きくは崩れません。

まあ,あえて使い分けるとしたら, 「危機一髪」 は危険な状況を回避した場合のことばで, 「間一髪」 の方は,必ずしも危険を回避した場合に限定されることばではないと思います。

電車のホームから酔っ払いが線路に転落し,そこへ電車が入ってきた時,近くにいた駅員が線路に飛び降りて,酔っ払いを抱えるようにして線路の外側へ転がりでて,かろうじて事なきをえました。こういう場合は 「危機一髪で助かった」 でも 「間一髪で助かった」 でも,どちらも使えます。

野球で,三遊間の深いところに打球が転がった。ショートが飛びつくようにして捕球し,強肩で矢のような球を一塁手に送ったが,打者も俊足で一塁ベースを駆け抜け,間一髪でセーフになった。こういう場合は, 「危機一髪でセーフ」 とは言わないですね。


どちらのことばにも 「一髪」 があります。この 「一髪」 は 〈 1 本の髪の毛〉 のことです。髪の毛 1 本の太さなんか 0.1 ミリもありません。

これを,空間的なわずかなすき間と考えても,時間的なわずかな差に置きかえて考えても,まあ,どちらでもいいのですが,要するに危険と安全とが,そのくらいわずかかな差で隣り合っているということを言っているわけです。

ちょっと言い方を換えれば, 〈危険がすぐ近くまで,直前まで迫ってきている〉 状況を言うことばです。


なお, 「危機一髪」 の方は,もう一つの語源説として,髪の毛 1 本で千鈞の重い物を吊り上げようとする危険な状態を言っているとする説もあります。

千鈞は,今の言い方にすると約 6 トンの重さということです。そりゃ,無茶というものです。


ただ, 「危機一髪」 にしても, 「間一髪」 にしても,危険と隣り合わせであっても,危険がすぐ近くまで迫ってきた状況であっても,ギリギリでなんとかその危険を回避できた,その危険から逃れることができたという状況で使うことばのように思います。

「危機一髪のところで,トラックにはねられて死んでしまった」 とか, 「間一髪で電車に乗り遅れてしまった」 などの表現もないではありませんが,やはりちょっと違和感があります。 どうでしょうか・・・・・。


なお, 「危機一発」 や 「間一発」 は,もちろん間違いです。

ワープロで漢字変換する場合, 「ききいっぱつ」 「かんいっぱつ」 で変換すれば, 「危機一発」 「間一発」 という誤変換はないはずですが, 「きき」 (変換) 「いっぱつ」 (変換) や, 「かん」 (変換) 「いっぱつ」 (変換) だと,誤変換される可能性があります。気をつけましょう。

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** 《参考図書》 **

記号-番号 については,

《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

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