語源 【判官びいき (ほうがんびいき) / (はんがんびいき) 】

不幸な人,弱い者に同情したり,何かの時にはその人の肩をもったりすることを 「判官びいき」 といいます。

「判官」 は 「はんがん」 とも 「ほうがん」 とも読みますが, 「ほうがん」 の方が正当な読みのようです。


ただし, 「ひいき」 の対象になるのは,ある条件が備わっている場合です。

例えば,ボクシングで,タイトルマッチに何回挑戦しても勝てないからといって,ただそれだけでは同情してもらえません。

しかし,そのボクサーが難病の弟の手術費をかせぐために厳しいトレーニングを積み,自身も贅沢をいっさい断ってつましい生活をしている,という事情が明らかにされると,その途端に,世間は彼に同情しはじめます。場合によっては,相手のチャンピオンに対して, 「お前はもう5度も防衛戦に勝ってきたんだし,もう十分に稼いだはずだから,このへんでタイトルを譲ったっていいだろう」 なんて,八百長を促すようなことを言う輩 (やから) も出てきたりします。

はい,そのような同情を集めるに値する事情,状況が何もなくて,試合に負けてばかりいるとか,実力がなくて仕事ができなくて出世できないというのなら,それは単純に,その本人に力がない,本人が努力しなかっただけのことですから,誰も同情などしてくれなくて当たり前です。


つまり 「判官びいき」 は,実力があるのに,ものすごく努力しているのに,その結果が報われずに,むしろ逆にどんどん悪い立場に追い詰められるような場合に,周りから同情され,ひいきにされることです。


それは,このことばが,あの悲運の英雄である源義経から出たことばだからです。

義経といえば,年少期の牛若丸時代からいろいろな逸話も多く,自身の武芸の力もさることながら,戦略家としての頭脳にも優れていて,源氏と平氏との争いで,平家討伐に絶大な力を発揮しました。

それなのに,・・・・というか,それだからこそなのかもしれません。義経は実の兄で,鎌倉幕府を築いた源頼朝将軍から疎まれてしまいました。

そして,頼朝の側近の一人の梶原景時は,頼朝のそのような気もちを感じとって,義経の追い落としを企み,頼朝に,義経の悪口をあること,ないこと,次から次へと吹き込みました。

それを真に受けた頼朝は,ついに義経を討つことを部下に命じました。その追っ手から逃れるため,義経は武蔵坊弁慶らとともに奥州方面へ逃げ延び,平泉で藤原秀衡の庇護を受けて,しばらくは平穏な暮らしを得たのですが,その秀衡の死後,秀衡の子の泰衡 (やすひら) が頼朝側に寝返って襲われてしまい,義経は自害することになりました。

このような事情から,源義経に対する世の同情が広まり, 「判官びいき」 ということばが生まれました。

では,なぜ,それが 「判官びいき」 というのかというと,この場合の 「判官」 は義経の地位・身分を表すことばだったからです。


平安時代から,幕府の身分 (官職) は4階級の分けられていました。それを四等官制といいました。

その四等官 (しとうかん) とは,上から 「かみ」 「すけ」 「じょう」 「さかん」 の四階級でした。

今,その四等官の官名を 「かな」 で書きましたが,実際にはそれぞれに漢字があります。ただし,その漢字表記が役所によって違っていました。

義経は,検非違使 (けびいし) の役を負っていましたが,検非違使とは,今でいえば警察と裁判の仕事にあたる任務でした。義経は,そこで上から3番目の 「尉 (じょう) 」 の役職にありました。この検非違使の 「尉」 の役のことを別名 「判官」 と呼んでいたのです。

ですから, 「判官びいき」 といった場合の 「判官」 は,義経そのものを指していたわけです。


こういった 「判官びいき」 は日本人の特徴の一つとも言われますが,でも,ただ同情するだけで,それ以上の行動を起こさないのであれば,あまりいい態度とはいえません。

学校や職場などで,だれかが 〈いじめ〉 を受けていたりするのを知っていても,見て見ぬふりをしてしまうのも日本人の残念な特徴のように思います。


「判官びいき」 から一歩踏み出して,その気の毒な状況の根源となっているものに立ち向かう勇気こそが大事なのではないでしょうか。

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** 《参考図書》 **

記号-番号 については,

《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

を参照してください。

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