語源 【綿 (わた) / 真綿 (まわた) 】

考えてみると,私の日常の中で 「綿 (わた) 」 が縁遠いものになってしまっています。

私が子どもの頃 (昭和 20 ~ 30 年代) は,夜具としての布団にしても,座蒲団にしても,また褞袍 (どてら) などの防寒着など,中に綿 (わた) を詰めたものが身の回りに普通にありました。

生活が洋式化してきて,ベッドとかソファなどを使うようになって,布団や座蒲団が日常から消えました。防寒着も,ジャンパーやダウンジャケットなどが主流になりましたから,今, 「綿」 という漢字も, 「わた」 と読むよりは 「めん」 と読むことの方が多くなりました。


子どもの頃, 「わた」 と 「まわた」 という 2 つの 「わた」 がありました。

「綿」 と 「真綿」 という漢字も知っていましたから, 「真綿」 の方は 「真」 がついているから,普通の 「綿」 より高級なものと思っていました。

大学生の時,本屋で立ち読みした,まあ今でいう雑学本みたいな本に, 「綿」 は植物で, 「真綿」 は動物・・・・・というようなことが書いてあって驚いたことがありました。


「わた」 というものは,もともとは蚕の繭の外側のふわふわしたところや,生糸にできない屑繭 (くずまゆ) と呼ばれていた部分を寄せ集めた,ふんわりした塊のことでした。室町時代あたりまでは,そのふわふわしたものを 「わた」 と言っていました。その繊維質のふわふわを少しぎゅっと押さえつけて密にすると,その中に熱が溜まって温かくなるので,それを衣類の中に詰め込んで,冬の防寒着に使っていました。

繭.jpg

そこへ,植物としての木綿 (きわた) が日本へ入ってきて,戦国時代になるとその木綿からとれる綿花 (めんか) を材料にした 「わた」 が盛んにつくられるようになりました。こちらの綿のほうが,蚕からとる綿よりも,容易に大量につくることができたので,次第にこの綿花の 「わた」 が主流になってきました。

綿花.jpg

繭の 「わた」 と,綿花の 「わた」 が共存するようになったわけですが,両方とも 「わた」 という名称だとややこしいので,繭からとる 「わた」 の方を,こちらが 〈本来のワタ〉 という意味で 「真綿 (まわた) 」 と呼ぶようになりました。

まあ,確かに 「真綿」 の方は,生糸のもとの素材ですから,考えようによっては絹 (きぬ) の一種といえないこともありません。それに対して, 「綿」 は,ある意味では木綿 (もめん) の材料になるわけです。

そう考えれば,木綿 (もめん) よりは絹 (きぬ) の方が高級品とされていますから, 「真綿 (まわた) 」 は 「綿 (わた) 」 の高級なものと思い込んでいたことも,とんでもない間違いだとは言えません。

まあ,ただ,同じ一つの線上での質のレベルの違いというものではなく,もともとが違う材料からつくられたものだったということなのです。


さて,それで 「綿 (わた) 」 と 「真綿」 の違いについては理解しましたので,ここからが本番の 「わた」 の語源です。


「わた」 の語源にもいくつかの説がありますが,私がいちばん納得しやすいのは次の 1) の説です。

1) 「わた」 は,もともと 〈中に詰めるもの〉 〈詰め物〉 をいうことばだった。動物の腸などの内臓を 「はらわた」 と言ったり,瓜の芯の部分も 「わた」 と言ったりする。それらと同じように,布団や衣類の中に詰めるものだから 「わた」 と言った。

この説が納得しやすいというのは,単なる私のフィーリングの問題ですから,ほかの説を否定するわけではありません。ほかに,主な説としては,次のようなものがあります。

2) 〈ふわふわした織り物〉 という意味で 「ふははた」 と言った。 「ふは」 は 「ふわ」 の古語。 「はた」 は 〈はたおり (機織り) 〉 のこと。その 「ふははた」 から 「ふはた」 → 「はた」 と縮まった。 「ふははた」 は,発音としては 「フワハタ」 であり,省略も 「フワタ」 → 「ワタ」 である。

3) 〈曲がりくねった〉 状態のことを 「曲 (わだ) 」 と言い,この繊維状のものが絡みあっていることから, 「わだ」 と言っていたものが清音化して 「わた」 になった。


なお, 「綿」 の漢字は, 「帛」 が 〈白い布〉 つまり 〈絹〉 を表しているとされています。このことからも, 「わた」 は今でいう 「まわた」 の方が先に存在していたことがうかがえます。

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** 《参考図書》 **

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