語源 【てんとう虫】

終戦後の昭和 20年代のなかば,私は幼稚園に 1 年間通いました。その当時は,今のようにほとんどの子が幼稚園か保育園に行くというような時代ではありませんでした。私は,家の商売の都合上,行かされたのでした。

私の家は写真館で,子どもを幼稚園に入れることによって,その園の卒園写真を撮らせてもらうというわけです。当時はまだ,卒園アルバムというようなものはありませんでしたが,まあ,各組ごとに子ども全員と先生のいわゆる集合写真を撮るわけです。

当時,その幼稚園は,各組に 60 人以上の園児がいて,組が5つありましたから,全部で 300 人以上の子どもがいたはずです。その全部の子ども (というか,その子の家) が写真を買ったわけではないでしょうが,まあまあ,それなりの儲けにはなっていたと思います。

1950(S.25)03 [6歳] 桜花幼稚園卒園.jpg

上の写真で,私は最前列の向かって左から 4 人目です。どちらかというとお金持ちの子が多かったなかで,私はあまり風采もあがらないほうで,ズボンもベルトなんかなくて,ボロ切れをつなぎ合わせたような何かの紐でした。

そんな私は,ほかの子たちからすれば絶好の 〈いじめ〉 の対象でした。特に私の斜め後ろ(2列目の向かって左から 3 人目) の弁護士の家の子が,何かにつけて私に意地悪をしました。

ある日,園の庭で何かして遊んでいる時間でした。その子がどこかで捕まえたてんとう虫を私に突きつけて 「これを食え」 と言ってきました。いくら戦後の食糧難の時とはいっても,てんとう虫は普通は食べないことぐらいは分かっていましたが,おとなしかった私は,その子に逆らうことなんかできません。仕方がないので口に入れました。さすがに噛むわけにはいかなかったので,そのてんとう虫を舌の上で遊ばせていました。 15 分ぐらいして先生が 「集まって~」 と言ったのを機に,ペッと吐き捨てました。ですから,てんとう虫がおいしいものなのかどうかは,今でも分かりません。


さて, 「てんとう虫」 にもいろいろな種類があるようですが,多く見かけるのは下の写真の上 2 枚のように,羽の色が赤の地に黒い斑点のヤツです。

てんとう虫.jpg

その 「てんとう虫」 は 「瓢虫」 という漢字もありますが, 「瓢」 が常用漢字ではないので, 「てんとう虫」 または 「天道虫」 が一般的な表記です。


このうち, 「天道虫」 が,このことばの語源そのものを表しています。

ただし,この 「天道」 の意味が語源によって違っています。

1) この虫は,草の茎や低い木の枝を,下の方から上に向かって昇っていって,その茎や枝の先端まで行くと,そこからパッと空へ舞い上がる習性があり,それが恰も太陽に向かって飛び立つように見えたので 「天道虫」 と呼んだ。この場合の 「天道」 は太陽のことです。そういえば,子どもの頃,太陽のことを 「おてんとうさま」 なんて言ったこともありました。

2) 中国の故事に,王がある事件の裁判をして,無実の人に罪の刑を課そうとしたら,この虫が飛んできて,真犯人の手に止まりました。それを見て,王は自分の判断の誤りをさとって,裁判をやり直したというものがあります。中国では世を治める神のことを 「天道」 と言いました。そこから,この虫をその神に例えて 「天道虫」 と言った。この場合の 「天道」 は神を意味します。

3) 西洋では,この虫は 〈聖母マリアの虫〉 であり, 〈キリスト教の教理,つまり天道を知る虫〉 とみなされていて,そこから 「天道の虫」 といわれていた。

などの説があります。

ただ, 3) の説は,私の手元にある参考図書には,なぜこの虫がキリスト教の教理を知る虫とみなされたのか,そこまで踏み込んだ説明がされていません。


まあ,でも,赤と黒の鮮やかなコントラストをもつ虫を,神に結びつけて神聖視するのは分からないではないです。


てんとう虫といえば, 「てんとう虫のサンバ」 を思い出してしまう私,もうそれだけで年齢がバレてしまいます。はい,今 77 歳です。

この歌を歌ったチェリッシュは,若い夫婦のさやわかコンビで 1970 年代に人気を博しました。

チェリッシュ 「てんとう虫のサンバ」
https://youtu.be/TeZjI5fKQXU

そんな 2 人も,今は花王の紙おむつの CM で 「まるで下着みたい」 をアピールする年代になっています。

紙オムツ(CM).jpg

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** 《参考図書》 **

記号-番号 については,

《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

を参照してください。

A-01 A-02 A-03
B-05 B-13 B-36 B-37 B-59
C-12 C-33(5) C-39(2)
J-06
O-23

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