語源 【べそをかく / なきべそ】

子どもの顔は正直なものです。あ,この子,泣きそうだなというのが,泣き出す直前の顔の表情で分かります。 口を 〈への字〉 にしたら, 「これから泣くよ」 の合図です。

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口を 〈への字〉 にするのは,つらいことや悲しいことを抑えて我慢しているギリギリの表情ともいえます。

このような状態での 〈への字〉 の口を 「へしぐち」 (圧し口) といいます。古語辞典の見出し語としても載っています。

「へす (圧す) 」 が 〈押さえつける〉 という意味であり,押さえつけられて口が 〈への字〉 になるということなのでしょう。ただし,「へす」 の 「へ」 と, 〈への字〉 の 「へ」 は,たまたま同じになっただけで,直接的なつながりはありません。

この 「へし口」 の 「へし」 が訛って 「へそ」 → 「べそ」 と変化したものとされています。

なお, 「べそをかく」 の 「かく」 は, 〈への字〉 につられて 「書く」 と思われがちですが,これは 「書く」 や 「描く」 ほどのはっきりした 「かく」 ではありません。

「汗をかく」 「恥をかく」 などと同じ程度のあいまいな 「かく」 と考えてよさそうです。

人が泣くのは,必ずしも悲しい時やつらい時とは限りません。 嬉しい時や感動した時にも泣くことがあります。しかし,後者の時は,口を 〈への字〉 にすることはあまりないようです。 「へし口」 はやはり前者の時が多いようです。

「なきべそ」 も,悲しい時,つらい時の表情です。


[追記] 15.12.12

新たな語源説を見つけました。

「べそ」 は 「めっそう」 が転訛したものという説です。

「めっそう」 は 「めっそうもない」 と言う時の 「滅相」 です。

「滅相」 は,本来は仏教の深遠な哲理から出た高尚なことばなのですが,俗世間で使われていくうちに, 「滅」 の字面だけからくるイメージに害されて, 〈滅入るような人相〉 〈みにくい顔〉 というような意味がついてしまったようです。

で, 「滅相をかく」 が, 〈今にも泣き出しそうな顔になる〉 という意味になり,その 「めっそう」 が 「べっそう」 に音韻転訛したというものです。

[め] が [べ] に置き換わること,言いかえると, [ま行] と [ば行] の入れ替わりは,言語学的にはけっこう起こることです。

馬 [ま/ば] , 美 [み/び] , 無 ・ 武 [む/ぶ] , 米 [まい/べい] , 木 ・ 目 [木/ぼく] などに見られます。


[追記]  2017.08.05

「なきべそ」 は,泣きそうになった時のゆがんだ顔が,臍 (へそ) のように崩れたようになるから,という語源説もありました。


[追記]  2017.08.07

「べそ」 の新たな語源説をまたまた見つけました。

能面の面の種類に 「圧見 (べしみ) 」 というのがあります。

唇を強くくいしばって,目を大きく開いた形相の面です。

この 「べしみ」 が 「べそ」 に転じたという説です。

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能のことが分からない私には,これらの面は 〈泣き顔〉 とか 〈泣き出しそうな顔〉 には見えません。 〈怒っている形相〉 に見えてしまうのですが・・・・。

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** 《参考図書》 **

記号-番号 については,

《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

を参照してください。

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