語源 【やり手】

「アイツは,なかなかのやり手だ」
現代では,このように言われる 「やり手」 は, 〈仕事の上で有能な人〉 〈敏腕家〉 というような意味で使われることばです。

ですから,そういう意味では褒めことばには違いないのですが,でも,心底から純粋に褒めているわけではない場合が多いようです。

このことばの裏には, 〈何か,ウラでヤバい手を使ってる〉 〈自分さえよければいいという至上主義で,まわりの人への配慮が欠けている〉 〈自分が優れていることを鼻にかけている〉 といったような,批判とも妬みともいえる評価も混じっているように感じます。

ですから,当の本人に向かって直接 「あなたはやり手ですね」 とはあまり言いません。


この 「やり手」 は,古語辞典の見出し語として載っています。

古語辞典には,①牛車 (ぎっしゃ) を巧みに動かす人 ②遊郭などで,遊女の教育係・監督としててきぱきとこなす女,というような意味が載っています。

私は,牛車など操ったことはありませんし,牛そのものを使ったこともありませんので,よく分かりませんが,古語辞典以外にも,参考図書の多くが, 「やり手」 の原義は 〈牛車を巧みに操る者〉 と書いていますから,牛をこちらの思いどおりに動かすのは難しいことなのでしょう。

「やり手」 は漢字で 「遣り手」 と表記します。

この 「遣る」 は,ある対象物をある場所から別の場所へ移動させるという意味があります。つまり,牛を目的地の方へ進ませるの意味にもなりますし,遊女を客のところへ派遣するの意味にもなります。

それ以外にも, 「遣る」 はもっと一般的な意味として, 「仕事をやる」 などと使われるように 〈行う〉 の意味もあります。

そういった意味の 「やる」 に, 〈行う人〉 を意味する 「手」 をつけて 「やり手」 ということばができたということです。

〈話す人〉 〈聞く人〉 を 「話し手」 「聞き手」 と言ったり, 〈追いかける人〉 を 「追っ手」 と言うのと同じ 「手」 です。


あなたの職場に 「やり手婆 (ばばあ) 」 はいませんか?

これも,もともとは,上に書いた女郎屋で遊女を取り仕切っていた女からきたことばです。

まあ,それなりの年配で,経験もそれなりに積んでいるので,若い人にいろいろテキパキと指示をして,いわゆるお局様みたいな存在なのです。でも,一応は仕事が 〈できる人〉 なので,表だって逆らうわけにもいきません。

はい, 「やり手婆」 と言われたら,これはもう明らかに,まわりの人たちからは 〈迷惑な存在〉 になってしまっています。


なお,将棋に香車という駒があります。この香車は前に一直線にしか進むことができません。そこから,香車のことを 「槍」 とも言います。

その香車の動きを,一直線に仕事に邁進する姿にたとえて 「槍手」 というようになったという説もあります。

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** 《参考図書》 **

記号-番号 については,

《参考図書》 リスト
http://mobility-8074.at.webry.info/201606/article_35.html

を参照してください。

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